https://www.35-35.co.jpより転載
新水道哲学として
「水道哲学」とは、松下幸之助が提唱した、水道のように安価で大量に国民へ商品を届けるのが産業人の役割という、一企業にとどまらない大きな理念です。
私ごときが解説するまでもない有名な言葉ですが、産業によって貧を克服するというテーマの一方でマーケットシェアを圧倒的に取って勝つという自社の経営学的な趣意もあったように思います。
この言葉は高度経済成長期に注目されましたが、実際に本人が言ったのはそれよりずっと前です。しかし、時がずれても共通点があって、
それは人口増加の時代だったという点です。明治初頭からわずか百年で日本人が三倍以上に増えていく真っ只中です。
急増していく日本国民に、必要な物を、より高い品質でより安価に、水道水のように供給して行く。成長時代において、理論的にも心理的にも共感を得て多くの企業人の理想となりました。
しかし、今、日本はすでに人口減少どころか人口急減社会というべき時代に突入しております。日本が有史初めて経験する社会に、経済や経営に対する考えも変えるべき時代が来ました。
弊社が関係する医療を取り上げてみると、
高齢者の方の割合が多くなるという人口構成において、社会保障および医療関連費用は増大の一途を辿っています。
現役世代にとって社会保障関連の負担は大きく感じるものですが、皆保険による医療制度は、大げさではありますが、日本国民のDNAのように精神的な強い拠り所を感じます。
個人的な経験からしても、自分の身内が何かあった時に医療機関にたどり着いた安堵感は代えがたいものです。
この国民精神の拠り所のような医療制度の維持に向けて、限られた金額のパイをIT費用に多く振り分けさせ、医療機関を担う人々が疲弊、あるいは治療に直接必要な物が不足してはなりません。またそれを許す時代でもありません。
医療システムに関わらず、経済パイが縮小していく中で、ITサービスはまさしく水道水のように、オープンであり、安価であり、確かであり、すぐに手に入ることが必要とされています。特定の産業や企業がサービスを独占することで多大な利益を得ていい時代ではありません。
成長を前提にした理念では無く、一企業が勝つための経営学では無く、新しい水道哲学が企業活動に要求されている時代ではないかと考えます。
株式会社ソーソー 代表取締役 下野友哉
[最終更新日 2023/12/25]